二○一五年に同社を設立し、厚木でオカリナキッチン本店を開業。自身も野菜を生産していた経験から、素材にこだわった手作り菓子の製造・販売を行っている。厚木市のマスコットキャラクターである「あゆコロちゃん」ともコラボした商品を作り出すなど、地元に根付いた活動も行う。二○二○年、大山こま通りにオカリナキッチン2号店を出店。
二○一五年に同社を設立し、厚木でオカリナキッチン本店を開業。自身も野菜を生産していた経験から、素材にこだわった手作り菓子の製造・販売を行っている。厚木市のマスコットキャラクターである「あゆコロちゃん」ともコラボした商品を作り出すなど、地元に根付いた活動も行う。二○二○年、大山こま通りにオカリナキッチン2号店を出店。
営業職から農家へ。 地元に根付いた商品を広めたい。
生まれも育ちも、ずっと厚木です。30歳までは企業で営業職をしていましたが、急に自営業がやりたくなり大きく方向転換。実家の農業を継ぐ決意をしました。昔は、農業の手伝いが嫌だったのに、不思議ですよね。始めた当初は、小松菜とほうれん草の違いもわからないほどでしたが、トライアンドエラーを繰り返して少しずつ作る野菜を増やしていきました。最初は作った野菜を、市場出荷していましたが、すぐにやめて自分で引き売りを始めました。以前働いていた職場のお客様を頼って、販売をスタート。そこからどんどん口コミで広がって、こだわりの有機野菜を、楽しみに待ってくれる人々がいて嬉しかったですね。けれど、数年続けていくうちに両親も高齢で働くのが難しくなってしまい、1人で続けていく将来に不安を感じ始めました。再び、別の道を模索している頃、作った野菜を蒸しパンにして販売してみることに。もともと、農加工には興味があったんです。農産物は価格が安いので、さらに価値あるものとして農産物を活かす商品を作りたかった。蒸しパンに続いて、農産物直売所でプリン販売を始めました。お菓子の修業はしていませんでしたが、産みたての卵や新鮮な食材を使用するなど、素材のよさが売り。40歳くらいまでは、地元の活動にも熱心に関わっていました。例えば、B級グルメが流行った時には、厚木シロコロホルモンを知ってもらう活動を行っていたり。厚木のキャラクターであるあゆコロちゃんの人形焼きを作ったり。地元に根付いたものを、広めていきたいという強い想いがありました。
２店舗目オープン。 参道での出会いと別れ。
お店を持たないまま3年ほどイベント出店などを行い、47歳の時に、オカリナキッチン本店を厚木市でオープン。そこから1年半で伊勢原大山に2店舗目を出店。いつかはのんびりとした環境でお店をやりたいと思っていましたが、WEBで空き家の情報を見た当初は、軽い気持ちで小田急不動産さんに連絡しました。でも実際に現地案内してもらったら、将来像とがっちり一致して、もうやるしかないなと。建物が古かったこともあり、友人に手を貸してもらいつつ、自分でリノベを進めて、少しずつお店らしくなりましたね。二○二一年の元旦から、飲食店営業も取得し、温かい食べ物もご提供しています。お店を始めるまで、大山は小学校の遠足で来たくらいで、そこまで馴染みのある場所ではありませんでした。でも歴史を調べてみると、昔はすごい人数が神社の参拝に訪れていて、帰りがけには宿場町でひと時の休暇を楽しんでいたことも分かって。歴史的な魅力に気付いているところです。もともと、限られた人たちが昔からずっと商売している場所だったので、初めてこま参道に入る時は、少し緊張しました。でも、近所のお店の方もすごく良くしてくれて、仲良く商売させていただいています。特に、とん勝中村屋さんとは、同じく外から入った仲間としていろんなことを聞かせていただきました。しかし、コロナの緊急事態宣言と同時に休業され「いつ再開されますか？」と聞いたところ「実は、辞めようと思っている」と。本当に美味しいものを出されていたので、すごく悲しかったですね。
引き継いだこま参道の味と、 新しく生み出した大山の味。
とん勝中村屋さんのお豆腐メンチは、こま参道でも親しまれていたメニューです。県外からも楽しみに来てくださっているお客様も多かったので「もし、お店をやる可能性がないなら、レシピごと買い取らせてもらえないか」と、お願いしました。店長である娘さんともご相談された結果「ぜひ、残してもらえるなら」と、ご快諾いただき「そう言ってくれて嬉しかった」とおっしゃっていただきました。お豆腐メンチを始めてから、お客様に「中村屋さんを探してたけど、違うお店だよね？」と聞かれることも多いです。経緯をお話しすると「そうだったの、ありがとう」と言ってくださって、嬉しいですね。「とんかつもやってくれればいいのに」と言われることもあります（笑）。とん勝中村屋さんも志半ばで、悔しさもあったと思います。だから、この味をつないで、こま参道を代表する商品になれたらいいなと思います。お豆腐メンチだけでなく、シフォンケーキには、大山豆腐を使用しています。初めて大山豆腐を食べた時、びっくりするほど美味しくて、絶対に使おうと思いました。豆腐を使用しているおかげで、しっとりした味わいになるんですよ。伊勢原大山のこれからを考えると、うちのような既存のお店とは異なる変わり種が成功することで、モデルケースになれればいいなと思います。やはり、通年では人通りにもムラがあるし、コロナの影響も大きいので、出店が難しい地域かもしれません。だからこそ、成功例として定着することで、新しいお店が参入するきっかけになったらいいなと。大山自体も、もとは宿坊の地ですから、若い人が楽しめるコンテンツを増やして、滞在する人が増えていったらいいですね。
【店舗情報】 オカリナキッチン 大山店 二○二○年8月に、大山・こま参道にオープン。大山豆腐を使用した、しっとりした食感のシフォンケーキと卵をたっぷりと使用した大山プリンが人気。以前、大山に出店していた別店舗から引き継いだ、お豆腐メンチも新たな看板商品となっている。地元産の食材にこだわり、農産物の価値をより多くの人に広げていきたいという想いを持つ。 神奈川県伊勢原市大山628-1 Tel:080-4750-0080 （現在は週末を中心に営業）